このページでは、債務整理の4つの方法について調べています。
「借金が積み重なり、返済で首が回らない…」そんな状況に陥ってしまったら、いったん債務を整理することで、建設的かつ現実的な返済計画を立てていく必要があります。
借金(債務)を整理するための主な法的手続きとしては、任意整理、個人再生、自己破産、特定調停が挙げられます。[注1]
以下に4つの方法を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
[注1]裁判所ウェブサイト:1. どうしても借金が払えなくて困り果てています。この際何らかの手続をとりたいと思うのですが,どのような方法がありますか?
弁護士や司法書士が、債権者と借入者の間に入り、交渉を行うのが「任意整理」です。多くの場合で「利息請求をストップさせ、数年間渡っての元本分割払いを認めさせる」ことが可能となります。
借入元金の残額を3〜5年間で完済する旨を債権者に同意してもらうことで、和解成立を目指すことが多いようです。
また弁護士からの介入通知があると、債権者は取り立てをストップせざるを得なくなります。任意整理の成立までには数ヶ月の時間を要するので、借入者はいったん返済地獄から解放され、ひと息つくことができます。
この期間を利用して、任意整理の和解成立後に、月々の返済額を確保する手段の確保や、中長期的なライフプランの立案、事業計画の見直し作業などを実践すると良いでしょう。
任意整理には裁判所が介入しないため、手続きが比較的簡単です。しかし個人で行うことは難しく、あくまで弁護士など専門家を頼る必要があります。
また任意整理を行うと、その後5年間はクレジットカード作成やローン契約が難しくなります。債権者による給与差し押さえなどの強硬手段が発生している場合、仲裁の法的効力はないので、早めの依頼が肝心です。
借金問題解決方法として自宅を手放すことなく、住宅ローンの返済を継続しながら、他の債務問題を解決するのであれば、任意整理がオススメです。
また「任意」での「債務整理」ですので、特定の金融業者や債権者を対象外とすることも可能です。
たとえば自営業の運営上、債務整理の事実を知られてはならない債権者に対しては、従来通りの返済が続けられます。
また長期間金融業者と取引されている場合、過払い金を返済に充当から相殺する、負担の軽減の可能性が視野に入ります。
任意整理でも払いきれない大きな借金の場合、採用されるのが「個人再生」です。こちらは民事再生法を利用するため、裁判所に申し立てる必要があります(費用も数十万円程度かかります)。
対象となるのはサラリーマンなど、継続した収入の見込みがある人。借金の総額を5分の1~10分の1にまで減らすことが可能です(借金額により異なる)。
原則として、借金総額の20パーセント(上限5000万円)、もしくは100万円のいずれか大きい額を、3年から5年間で返済する計画を債権者に提案することで、和解を目指します。
この3年間の返済を滞りなく行うことで、残りの負債額が全額免除となります。
条件を満たしていれば「住宅資金特別条項制度」を利用することができ、住宅ローンはそのまま残りますが、家を手放さなくても済みます。条件に関しては複雑なので、弁護士など専門家への相談が必要です。
なお個人再生を行うと官報に掲載されてしまうほか、7年間はクレジットカード作成やローン契約が難しくなります。
個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者再生」のふた通りがあり、和解案として提示する支払い計画の承認の基準など、いくつかの相違点が見られます。
ちなみに前者は、自営業や無職などの債務者が対象で、後者は変動が少ない給料や定期的な収入のある債務者が対象です。
小規模個人再生の和解案成立に際しては、多数決が採用され、債権者が可否の投票を行います。[注2]
債権者の半数以上が反対、あるいは債務総額の半数を超える金額の債権者が反対した場合、和解案は認められません。
対して給与所得者再生の場合、債権者からの意見は聞かねばなりませんが、投票は実施されず、定められた最低金額以上の決まりを守っていれば問題ありません。[注2]
任意整理では完済が難しいと判断されるも、自己破産の必要はない、中間的な状況に置かれている方に適した債務整理です。
また自己破産申請では免責決定が出なかった場合、個人再生が視野に入ります。住宅ローンやマイカーを残したままの債務整理も可能ですので、交通手段として車が必要な方々にオススメです。
額の大小はともかく、借金をいったんゼロにしたい、という場合に採用する方法です。その代わり、住宅や目ぼしい財産などは売却・清算し、債権者へ配当しなければなりません。
とは言え丸裸の状態では再生が難しいため、99万円以下の現金や家具・家電、評価額20万円以下の自動車などは手元に残すことが可能となっています。
その手続きには裁判所への申し立てが必要で、数万円~数十万円程度の費用がかかります。また、借金の理由が正当性に乏しい場合(単なる浪費やギャンブルなど)、裁判官の判断で「免責不許可」の判決が下されることもあるので、甘く見ないように。
なお自己破産を行うと官報に掲載されてしまうほか、10年間はクレジットカード作成やローン契約が難しくなります。
また連帯保証人がついた債務の自己破産での免責を申し立てた場合、これが承認されると連帯保証人に債務が移行され、多大なる迷惑をかけてしまうことになります。
自己破産はあくまでも最後の選択です。「もう自己破産しかない」と思っていても、別の債務整理の方法が可能なケースもあります。まずは、なるべく早く専門家へ相談することが大切です。
なお、自己破産を申し立てたことで、破産確定までの期間、就労が認められない職種もあります。会社役員、弁護士、公認会計士、生命保険募集人や証券会社の外交員など現金を取り扱う職種、警備員などがこれに該当します。[注2]
破産確定後は復権からの復就労が可能ですが、失職や職場内での立場の喪失など、将来のライフプランに悪影響が生じる可能性もあります。他の債務整理の選択が賢明な場合もあるでしょう。
自己破産は「同時廃止型」「管財型」のふた通りに区別され、細かい部分で相違点が見られます。
自己破産申し立て時に申請者に手続き費用以外の財産が本当にないと、裁判所が調査から確認した場合は、前者の同時廃止型が適用されます。
対して会社が債務超過で支払い不能状態の場合、破産管財人を擁立する後者に該当します。
前者を申し立てるも、隠し財産もしくは何らかの財産の存在が、裁判所によって確認された場合、後者の管財型として手続きが進められます。
頑張っても借金が返せない、収入に対して借金の金額が大きいなどの場合、自己破産での債務整理を視野に入れるべきでしょう。
ちなみに自己破産が必要か否かを判断する基準として『返済比率』が40%を超えるかどうかが目安となります。
返済比率は『元利均等返済月額÷月収×100』で算出される値であり、この数値が40パーセントを越える場合、自己破産すべきと判断できます。
次にリストラで返済能力を失った人、住宅などの財産を持っていない、住宅を建てる予定がない人も、財産没収や一定期間ローンが組めなくなるデメリットの影響が少なく、オススメの債務整理です。
個人が申し立て、弁護士の代わりに、裁判所に間に入ってもらう方法が特定調停です。裁判所の調停委員が、債権者との交渉を行ってくれます。
借入者が無職でも、またギャンブルや浪費が理由による借金でも、申し立ては可能。
任意整理と同じく取り立てを止められるほか、自己破産のように手持ちの財産を処分する必要もありません。
裁判所の開庁時間は平日の日中で、早朝や夜遅い時間、土日祝は時間外です。
個人で申し立てを行いますので、調停委員との面談などで、最低でも数回は平日日中に裁判所へ出向かねばならない点には注意が必要です。
その分、申し立て時に必要な費用は非常に安価で、裁判所へ納付すべき金額は、債権者1社につき500円の手数料プラス、数百円程度の予納切手のみ。
自己破産や個人再生申し立て時に必要な数万から数十万円と比較するまでもなく、費用負担軽減のメリットを活かす債務整理と言えます。
ただし他の民事調停と同様に、和解が成立しないというケースが多々あります。借金額を減らしたくない債権者から、協力的な態度を引き出せないケースも多く、泥沼の訴訟に発展してしまう可能性も…。
というのも、特定調停は原則3年間での完済を目指す、返済方法の栗直し手続きであり、債権者全員との和解を整える必要があるのです。[注2]
申し立て時の債務額が大き過ぎる、安定収入が見込めないなど、債権者が難色を示す要素が見られる場合、状況を悪化させてしまうリスクが懸念されます。
確実に繰り直しから債権者が同意する返済計画を実践できる、確実な裏付けが求められます。
このため、借金の清算に特定調停を利用する人は、多くないのが現状です。
また特定調停を行うと、その後5年間はクレジットカード作成やローン契約が難しくなります。
まずは債務整理費用を少しでも抑えたい人にオススメです。
また書類を正確に記入できる、必要な添付書類を漏れなく取り寄せられるなど、事務処理が得意な人に向いた債務整理です。
また、申し立てから1ヵ月から2ヵ月程度で手続き完了と、他の債務整理と比較して短期間で済むケースが多く、速やかに再スタートを切りたい人に適しています。
借入金額や期間だけを基準にして債務整理のタイミングを見極めるのは、正しい判断とは言えません。
たとえば事業資金の返済の場合、事業計画に沿って、多額の借入金を返済期限を守って返済し続けられているのであれば、それは経営に必要なお金の流れです。
対して個人的に借り入れた少額でも、指定期日内の返済ができず、滞納から延滞状況に陥れば、この時点で既に返済能力を欠いた状態だと判断せざるを得ません。
延滞や滞納状態を繰り返してしまう、これ以上返済を続けられない、借金返済目的で新たな借り入れを起こさざるを得ないなどの状況に陥れば、債務整理を視野に入れるべきです。
債務整理が必要な状況下では、無意味な着手の先延ばしは禁物です。
「債務整理イコール自己破産」「自己破産イコール人生の終わりで再起不可能」といった誤認識から、速やかな初期対応を躊躇してしまってはなりません。
借金問題は一旦生じると、時間の経過とともに深刻さを増してしまう金銭トラブルです。
勇気をもって現実と冷静に向き合い、自身が置かれた現状を正しく理解のうえ、確実に自身で対応可能な解決策を見極めての実践が望まれます。
現在自身が置かれている状況と、債務の整理で得られるメリットと避けられないデメリットを把握した上で、中長期的なライフプランを描いて自身にとって最も適切な方法を選んでいきましょう。
1968年、地元名古屋生まれ。愛知県弁護士会所属。企業から個人の法律相談まで、①親切・丁寧、②迅速、③適切・適正をモットーに幅広く対応。任意整理、個人再生、過払い金返還請求など債務整理に関して幅広く対応しており、難しいケースでも最適な方法で解決に導いてくれると評判です。面談・相談は、何度でも無料。どんな借金の悩みも気軽に相談できます。
このサイトの監修アーク法律事務所